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田中良紹の「国会探検」の平成24年1月24日付けの「愚者の楽園」を以下に紹介する。

「普通の国」なら国がひっくり返るほどの大騒ぎになっている問題が大騒ぎにならないからこの国は異常である。

3月11日に発生したフクシマ原発事故で設置された政府の「原子力災害対策本部」が議事録を作っていない事が判明した。国家としてあるまじき行為、民主主義の根幹が否定された話である。ところがメディアは騒がない。日本は極めて静かである。本質的な問題を直視しようとしない国は「愚者の楽園」と言うしかない。

昨年5月に書いた『場当たりポピュリズムの末路』というコラムで、私は「大震災の発生直後からの政治の対応にどうしようもない違和感を感じてきた。理解できない動きの連続に唖然としてきた。それを想定外の事が起きたからという言い訳で政権は切り抜けてきたが、とてもそれだけで納得できるものではない」と書いた。

その違和感の正体がここにある。この問題を報じたNHKによると、事務局を務めた原子力安全・保安院の担当者は「業務が忙しくて議事録を作成出来なかった」と釈明したという。国民をバカにするのにも程がある。そんなデタラメが通用すると思っているなら国民も随分なめられたものである。

会議でメモを作らない官僚など存在しない。どんな緊急事態でも、どんなに多忙でも、メモを作るのが官僚の仕事である。総理大臣以下全大臣が出席した「原子力災害対策本部」の会議は、いわば行政府の最高レベルの会議であるから記録がない筈はない。それを「議事録がない」事にしたのは「会議の内容を隠蔽したい」と言っているに等しい。

誰が記録を隠蔽しようとしているのか。政治家が官僚に隠蔽を命じたとすればその政治家はもはや国民の代表ではない。国民主権を裏切る側の代表である。それとも政治家の指示もないのに官僚が隠蔽しようとしたのなら官僚は国民の代表を無視した事になる。それも国民主権を裏切る行為である。日本は民主主義国でない事になる。

放射能予測装置「スピーディー」の情報が国民に公開されなかった問題でも菅総理、枝野官房長官らは「知らされなかった」と釈明した。一方で文部科学省の官僚は事故直後に米軍に「スピーディー」の情報を提供した事を認めた。政治家は本当に知らされなかったのか。日本の官僚は国民の代表ではなくアメリカの下で働いているのか。米軍は放射能から守られ、国民は放射能に汚染した。大問題なのに誰も追及しない。

以前『秘密会がない国会は異様だ』というコラムを書いた。他国では当然のように開かれる「秘密会」がわが国会では開かれない。政治に未熟な人間は「何でも透明にするのが民主主義だ」と言うが、国民を外国の勢力から守り、経済を円滑に運営するためには、機密情報を元に政治家同士が議論する必要がある。国民の利益のために「透明にできない」場合もあるのだ。

しかしメディアには公開しないが、機密保持を条件に与野党の議員、すなわち国民の代表には教えて議論するのが「秘密会」である。国民の代表に公開すれば隠蔽した事にはならない。ところがわが国では肝心な情報を官僚が独占し、国民の代表に教えないから「秘密会」も開かれない。霞が関の中だけで結論を決め、一部の政治家にだけ教えて国会を誘導する。だから総理大臣も情報を知らされない可能性がある。それを変えようとしたのが09年の政権交代だったが、全く変わっていない事がこの問題でも明らかである。

問題を沈静化させるためか、藤村官房長官は23日の記者会見で「議事録を作成する」と発言した。しかし録音があるのかどうかは明らかにされず、職員のメモを頼りに作成すると言う。それが実際の議論通りなのかを国民は判断する術がない。もはや政府に都合の良い議事録が作られると考えた方が良い。そうなると政府と国会と民間とに作られた事故調査委員会の調査はどうなるのか。気の抜けたビールのような気がしてきた。

そして忘れてならないのが原発事故の対応を中心的に行なったのは「原子力災害対策本部」ではなく、東京電力本社内に作られた「原発事故対策統合本部」である事だ。事故発生の4日後、菅内閣は法律に定められた「原子力災害対策本部」とは別にわざわざ任意の組織を作って事故対応に当った。その議事録が明らかにならなければ今回の原発事故の対応を検証する事は出来ない。

 「フクシマ」を将来の国民を守るための教訓にするには、「統合本部」の議事録の公開は必須である。政府が公開を拒むなら野党が国会で追及すべきである。つまらぬ党利党略に凝り固まって国民に人気のない自民党にとって起死回生の攻撃ポイントになる。それが出来ないなら自民党は昔と変らぬ官僚下請け政党と看做され、政権交代など夢のまた夢になる。

 沖縄返還交渉で佐藤栄作総理の「密使」を務めた故若泉敬氏は、アメリカとの外交交渉で核持込の密約を呑まされ、沖縄県民に贖罪の心を抱いていた。一方で沖縄返還後の日本が日米同盟に絡め取られていく様に絶望し、極秘交渉の経過を『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』という本に著した。密約の暴露は日本に衝撃を与える筈であった。ところが誰も騒がない。重大問題に鈍感な日本を若泉氏は「愚者の楽園」と呼んだ。今回の議事録問題は私にそれを想起させる。

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