自己保身に走った「大本営」

上杉 隆(ジャーナリスト)(VOICE 2011年4月19日掲載) 2011年4月23日(土)配信

日本全体の信用を失墜させた

 東日本大震災は、大地震というよりも世界的な原発事故として認められるようになってしまった。

 3月18日、原子力安全・保安院は、国際原子力事象評価尺度(INES)の評価レベルを5まで引き上げた。これによって、1979年の米国スリーマイル島での原発事故に並び、国際的には、今世紀最悪の原発事故になったことが確定した。

 だが、すでに事故発生直後から、フランスや北欧などの国や機関では、それ以上に深刻ではないかという認識が広まっていた。国際原子力機関(IAEA)の委員のなかからも、チェルノブイリのレベル7には及ばないものの、レベル6に相当するきわめて深刻な事故だ、という声も挙がっている。

 そこで、私は海外の認識とのギャップを埋めるため、そのことを繰り返し繰り返し、首相官邸に直接、訴え続けた。あらゆるチャンネルを使って、声を挙げた。それはまだ、1号機の爆発前であった。

 だからであろうか、そのとき以来、「デマを飛ばすな」という批判が多く飛ぶようになった。だが、そうした専門家や政府高官やマスコミの記者たちにいいたい。いまはどうなっているのか? と。

 いずれにしろ、事故レベルは5を超えたことで、今後、世界中の人びとにスリーマイル、チェルノブイリと並んで、フクシマという地名がその記憶に刻まれることであろう。

 このことによる損害は計り知れない。おそらく福島産の農産物などの食料品は、今後しばらくのあいだ、決定的な風評被害に晒されることだろう。それだけではない。海外からみれば、関東、いや日本全体の信用の問題になってしまっている。

 こうした国家の信用を失墜させたのは、直接的にはもちろん「3・11」の大地震である。だが、それだけではない。大地震だけで日本産の農産物が売れなくなるということはありえない。

 問題の責任は、自己保身に走った「大本営」ともいうべき、政府・東電・記者クラブの三者にある。
 東日本大震災が大震災であることに疑いはない。だが、福島第一原子力発電所の事故に関しては、初期対応の遅れ、拡大する被害状況といい、「人災」のにおいをプンプンと放っている。

「まったく心配ない」(枝野長官)と言い切っていた政府も、1号機、3号機、2号機、4号機と放射能漏れを起こし始めると、さすがに気づいたのだろう、東電との統合本部を設置し、ようやく一元化したうえでの対応を始めたのだ。それが地震発生4日目のことだった。それでも放射能漏れは問題なく、被害が及ぶことはないと言い切っていた。

「人災」の補償は誰が払うのか?

 ちょうどそのころ、政府、東電、原子力安全・保安院、大手メディアは繰り返し、「未曾有の天災」という言葉を多用し始めた。早くも自らの責任を免れるためのプロパガンダが始まったのだ。その狙いは、このひどい「人災」を、あくまで前例のない未曾有の大天災に仕立て上げ、あらゆる面での免責を求めていくことにある。

 とりわけ、本丸である東電の記者会見に出ると、その狙いは明白であった。言葉の端々に「未曾有の」「前代未聞の」が付け加わる。

 その言葉を聞いて、私はすぐにラジオやツイッターなどのメディアで、「東電は免責を狙ってきている。この酷い事故の責任を国民に負わせようとしている。これは天災ではなく人災だ」と主張してきた。そして、政府と東電が狙っている「免責」を指摘したのだった。それは次の法律に基づくものだ。

「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない」(原子力損害賠償法第2章第3条の1)

 ポイントはもちろん後段の部分である。これだけの被害を出しているにもかかわらず、東電はいっさい責任を取らなくて済む可能性があるのだ。

 その点への怒りを沸騰させ、この原稿を執筆していたところ、次のようなニュースが報じられた。

「政府は20日、東京電力福島第一原発の事故について、原子力事業者による損害賠償を定めた『原子力損害賠償法(原賠法)』の例外規定を初めて適用し、被害者の損害を国が賠償する方向で検討に入った。補償対象は、避難と屋内退避指示が出た住民約22万人のほか、営業に支障が出た企業や風評被害を受けた農家なども含まれ、政府内には国の賠償総額は1兆円を超えるとの見方が出ている」(共同通信)
なぜ、この「人災」の補償に国民の税金が使われなくてはならないのだ。東電の責任は決して免れるものではない。
今月の3日、東京地検は週間朝日の山口一臣編集長に上杉隆氏の書いた記事に関して聞きたいという電話があったが、編集長は出張で、今日は行けないと言うと、ファックスで抗議書がおくられてきた。それに対して山口一臣編集長と上杉隆氏の連名で抗議書を東京地検の谷川恒太次席検事に送った。そのウラ話を週間朝日「談」に掲載しているので紹介する。

■誌面じゃ読めない「検察の『抗議』に抗議」のウラ話

 お騒がせした東京地方検察庁からの「抗議書」の顛末についてはすでに説明させていただいたとおりです。内容については2月19日号で筆者の上杉隆さんが論駁したように、まったくお話にならない「虚偽」に満ちたシロモノでした。そこで、週刊朝日は同号の上杉さんの記事にしたがって、「抗議書」に対する抗議と、新たな質問事項を書面にして東京地検の谷川恒太次席検事に送りました(別掲)が、当然のように返事はありません。

ただ、2月19日号掲載の上杉さんの反論記事に対しても、いまのところ抗議書も呼び出しもきていないので、検察は一連の〝違法捜査〟に関する上杉さんと週刊朝日の指摘を認めたものと解釈させていただきます。



 それにしてもなぜ、検察はあのような「虚偽」に満ちた抗議書を送りつけてきたのでしょう。

 検察内部の「関係者」から聞いた話では、上杉さんが最初に書いた、〈検察が何の罪もない若い母親である女性秘書を騙して呼び出し、10時間近くにわたって「監禁」し、「恫喝」を繰り返すという信じがたい人権侵害をしていた〉というスクープ記事を読んだ心ある読者や一般市民から、東京地検に抗議の電話が殺到したそうです。当該号が発売されたのが2月2日で、翌々日の4日には石川起訴、小沢不起訴発表というイベントを控え、当日までに「なんとかしろ!」と上級庁からきつく言われたらしいのです。

 そこで、あわてた地検の谷川次席検事が編集長のわたしを呼びつけ、抗議の意を申し入れ、抗議書を渡すセレモニーがやりたかったようなのです。それが石川起訴の前日、3日のことでした。ところが、すでに説明させていただいたとおり、わたしが出張で不在のため、やむなく抗議書のみをファックスで送ってきたというわけです。

 わたしは帰京後、ぜひ谷川さんにお会いしてお話をうかがいたく、何度か地検に電話を入れたのですが、「ご足労いただく必要はありません」ということになったのは、そういう事情があったようです。要するに、その日でなければ意味がない。もはや、わたしを呼んでも手柄にならない。わたしは不要になったわけです。



 しかし、事態はすでにご存じのとおり、抗議のためにわたしを呼びつけようとしたことが「スワ、地検から出頭要請か?」「週刊朝日の編集長が捜査妨害で逮捕へ」などとツイッターを中心に爆発的に広がったため、火に油を注ぐ結果となりました。地検には「これは言論弾圧ではないか」といった抗議の電話が何倍にもなって返ってきたそうで、地検の「周辺筋」からわたしどものほうへ「なんとかならないのか?」といった話も伝わってきたほどです。残念ながら、それは編集部でもどうにもできない話でした。
つづきはこちらで

 昨夜8時から朝日ニューススター「ニュースの深層」という番組があった。進行役がジャーナリストの上杉隆氏、お客が原口総務大臣。これを知ったのがTwitterである。そしてパソコンでその番組が見えた。これには感動した。そして、この番組の内容を津田大介がツイッターしている。
 この試みは実験的に行われたということだが、大成功である。メディアが大きく変わる歴史的瞬間の予感がした。今特にマスメディアの報道のあり方が問題視されているが、今後は必然的にマスメディアも変わらずをえなくなってくる。意図的に国民を扇動していたメディアはそれができなくなる。特に今問題になっている検察と記者クラブの関係、これは崩れざるを得なくなる気がする。

 ネットによって、特にtwitterの出現によってメディアが大きく変わろうとしている。
政治家は全員がtwitterでつぶやいてもらいたい。そうすれば、その政治家の人間性、考え方そして日常の政治活動が手に取るように分かる。そうすれば政治がオープンになり、国民も身近に感じるようになる。政治が変われば社会も変わる。
 原口大臣はツイッターを昨年12月に始めたが、大臣の政治に対する姿勢がtwitterから痛烈に伝わってくる。鳩山総理もこの正月から始めた。是非、政治家全員が初めて欲しい。
「ニュースの深層」をご覧になっていない方はUstreamの録画アーカイブファイルでご覧になれます→http://www.ustream.tv/recorded/4393054